メイザーモード

家族の記録

日本語に訳すと、守銭奴(しゅせんど)モード。

ウチの奥さんの別名。

もちろん命名したのは自分で、彼女は全く気に入ってない。

そりゃそうだ。

その語感からは、全くと言っていいほど、良いイメージを抱かれないからだ。

メルカリ、ラクマ、モバオク、ペイペイフリマなどを駆使し、

断捨離→出品→送付→売上金獲得→断捨離・・・

を24時間365日(決して言い過ぎではない)休むことなく繰り返している。

あくまでも、これは彼女への悪口ではなく、むしろ賞賛であり、畏敬の念の現れなのだ。

現在我が家には二人の子どもがいる。

3歳と1歳。

その二人の面倒を見つつ、家事をし、さらには夫の世話もしながらなのである。

そこにスキマ時間などあるのだろうか、と思うほど戦場さながらの一日なのにだ。

それでも彼女は時間を作り出し、せっせと出品、梱包、発送をしているのだ。

夜、帰宅すると、ときには山積みの荷物が置いてある。 

次の日、発送するためだ。

その光景を目にするたび、『この人と結婚して良かった』と実感が込み上げる。

そんな時ふと、思い出す。

新婚旅行で彼女の地元を訪れたとき、友人に会いたいからと訪ねたことがあった。

正直言えば、奥さんの友人と会ったところで、何を話せば良いのやら…と微妙な心持ちだった。

車を走らせ、その友人宅に到着し、チャイムを鳴らすと、親らしき女性が出てきた。

『まぁ!久しぶりじゃないの!』

満面の笑みでそう言う。

それは、元々のキャラなのか、ウチの奥さんとの関係性なのか定かではないが、少なくとも歓迎されているのは確かだった。

ほどなく友人が登場する。

こちらも同様、久しぶりだし、なんと言っても、遠く離れた地へ引っ越していった友人が突然目の前に立っているのだから驚きを隠せないのも当然なのだ。

立ち話という性質上、積もる話はそこそこにおいとまする予定ではあったのだが、その中で衝撃の事実を知らされることになる。

何の話の流れかは覚えていないが、その友人が、奥さんのことを『オークションばばあ』と呼ばれていたことを口にしたのだ。

えっ!?と思わず聞き返す。

再度『オークションばばあ』と聞かされる。

なるほど。

即座に全てを理解する。

いや、理解せざるを得ないのだ。

奥さんは最近になって、メイザーになったわけではないのだ。

はるか昔から彼女はそうだったのだ。

その友人はおそらく、いろんな意味を含めて発したのだと感じた。

旧知の人間が突然現れ、結婚した、新婚旅行で来た、これが主人だと矢継ぎ早に情報をくれるものだから、それ相応の対応を迫られた結果、昔話の一貫でとそんな呼称を言葉にしたにちがいない。

ちょっとだけ、悪意もあったのだと思う。

奥さんは、ちょい天然、というか、空気を読むのが得意でない。

それが魅力でもあり、欠点でもある。

自分の知らない過去において、どんな関係性であったかは完全に知ることはできないが、少なくとも、悪い関係ではないとは思えた。

なんてことを時折、思い出す。

それを含めても、自分は心から彼女と結婚して良かったと思う。

いつもではないけれど。

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