嫌われないように嫌われないようにと生きてきた自分にとって、これほど衝撃的なタイトルに出会ったことはありません。
実際に手に取り、まず一つ深呼吸をしました。
このとき、少しのためらいがありました。
表紙をめくり、この本を読んでしまったら、これまで築いてきたものがガラガラと崩れ去ってしまうかもしれないという恐怖があったからです。
しかし、知りたいという欲求が恐怖をはるかに超えていたのでしょう、表紙をめくり、この本の世界に引き込まれてしまうことになりました。
そして、その内容は、想像するよりもはるかに衝撃的なものでした。
人生観を180°変えられたといっても過言ではないこの本を、ぜひとも一人でも多くの方に知ってもらいたい、その一心でこの記事を書きます。
この記事を読めば、人に嫌われる恐怖から解放されて、自分の思いのままの人生を生きることができるヒントをもらえます。
『嫌われる勇気』の『嫌われる』とは?
この本の一番の魅力は、タイトルにある『嫌われる』ことに対する勇気を持てることにあります。
たいていの人は、無意識に人に『嫌われたくない』という本能が働いているものです。
それは決して悪いことではありません。
生きるための防衛本能だからです。
しかし、人に『嫌われない』ようにしようとするあまり、本来の自分を出せないことが悩みや苦しみになることも少なくないです。
なぜなら、心の自由が奪われているからです。
だからと言って、この本が、人に『嫌われない』ようにすることをやめて、人に『嫌われる』ような悪行を推奨しているのではありません。
タイトルの『嫌われる勇気』で言う、『嫌われる』の意味は、人に嫌がらせしたり、迷惑をかけたりして『嫌われる』ことではなく、人の目を気にせず、自分が生きたいように生きればいいということ。
そのためにはどうしていけば良いのか、を教えてくれます。
『嫌われる勇気』の源、アドラー心理学について
この本のベースとなっているのは、個人心理学(アドラー心理学)と呼ばれるものです。
アルフレッド=アドラーという哲学者であり、精神科医であった人が提唱するのが、『アドラー心理学』です。
『嫌われる勇気』の著者の紹介
この本は共著形式をとっています。
フリーライターの古賀史健さんが岸見一郎さんのお宅に何年にもわたって通いつめ、その取材を対話式の本としてまとめたのものとなっています。
この対話形式というのが、大きな魅力の一つです。
まるで自分の意見を代弁しているかのように問いかけがあり、それに対する答えもしゃべり言葉なので、スッと心に入ってくるように感じます。
ここからは著者の方々をご紹介します。
岸見一郎さん
- 京都在住
- 哲学者
- 京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学
- 哲学を学びながら、アドラー心理学を研究
- 精神科医院などで多くの青年のカウンセリングを行う
- 日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問
日本ではまだまだ名を知られていない時代から、アドラー心理学を研究し、それをどう活かすのかを若者たちに伝えてこられたようです。
大学院時代に、母親の看病のため、半年間休学するほどの介護を経験され、その間に学んだ哲学の価値を実感したことが、アドラー心理学の研究に繋がっているとのことです。
古賀史健さん
- 1973年生まれ
- フリーライター
- 書籍のライティングを専門としている
- インタビュー集『16歳の教科書』はシリーズ累計70万部突破
- 20代の終わりにアドラー心理学と出会い、衝撃を受ける
ご本人自らが、アドラー心理学と出会ったことで、これまで生きてきて培った常識を覆されるほどの衝撃を受けたそうです。そこには猜疑心と恐怖心があったことでしょう。
だから、納得するまで追求する意味をこめて、岸見さんのもとをなんども、なんどもかよいつめ、そのインタビュー記事をまとめて、この『嫌われる勇気』を作られたそうです。
ここからは、『嫌われる勇気』の概要を紹介していきます。
『嫌われる勇気』の概要
1.トラウマは存在しない
この本を読んでまず初めに衝撃を受けたのが、トラウマは存在しないという考えです。
私自身、トラウマだらけで過ごしてきたこの半生でしたから、「トラウマは存在しない」なんて言われて、かなりショックを受けました。
なぜなら、トラウマがあるからこそ、それを踏み台に前に進んで来たところがあるからです。
しかし、アドラーは「トラウマは存在しない」と言い切っています。
もちろん、その理由も明らかにしていますが、私はまだ100%受け入れることができていません。
2.すべての悩みは人間関係にある
悩みは人によってそれぞれ、いろんな形の悩みを持っていて、苦しんでいる。
それが一般的な「悩み」に対するイメージだと思っていました。
しかし、『全ての悩みは対人関係にある』と言っています。
は?いやいや。
確かに人間関係の悩みはあるし、それも大きな問題となるだろうけど、他にも、お金の問題、体の問題とか、いろいろあるし!
それらを全部ひっくるめて「悩みは全部人間関係にある」と言いきる。
こればっかりは受け入れられないよ!と反発する気持ちで読み進めていましたが、どうやら、そうでもないみたいです。
いかなる悩みも、その本質に目を向けて突き詰めれば、そこには、「人との関係性」から起因しているのだ、と。
これにも、心から衝撃を受けました。
同時に、心から納得をしたのも事実です。
3.課題の分離
アドラー心理学で、まず初めに理解すべきところが、「課題の分離」です。
課題の分離とは、目の前にある問題=課題は、一体誰のものなのか?まずそこに視点をおくことから始まります。
その課題が「自分」のものなのか、「他人」のものなのか。
それを見極め、分離する。
それが「他人」の課題なら、踏み込まない。
あらゆる対人関係の問題は、「他人」の課題に土足で踏み込むことから起こるのです。
課題の分離をいかに理解し、実行するさきに、本当に望む自由があるのです。
しかし、言うは易し、行うは難しのごとく、「課題の分離」を理解はできても、実行するのは至難の業なのです。
そこで、この「課題の分離」を実行することに繋がることをつぎのように挙げています。
実はこの三つが、『嫌われる勇気』の柱と言えるものなのです。
なぜなら、
- 人と比較することなく、ただ、今の自分をありのまま受け入れること。交換不能なものを受け入れること。与えられたものを変えようとせず、それをそのまま受け入れて、どう活かすか
- 悩みは全て対人関係にあることの前提は、人を信じられないことにある
- 他への貢献なくして自らの価値を実感することはできない
4.共同体感覚
アドラー心理学の根幹となる言葉です。
この『共同体感覚』の字面を見て、なんだそれは?とお思いになる方も多いでしょう。
すべての悩みは対人関係にあり、その入口を『課題の分離』とすれば、ゴールが『共同体感覚』だとアドラーは言っています。
『共同体感覚』とは
他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」と感じられること
嫌われる勇気 より引用
え、そうだよね!?それって、みんなが本当はそうしたい、そう思いたいという理想のことだよね?
至極フツーの、まっとうな主張だ、と古賀さんも本の文中で言っています。
「共同体」とはなにか。
アドラーがいう「共同体」の定義に恐ろしさを感じるぐらいのおどろきを感じました。
あ、なるほど、とも納得したのです。
『共同体感覚』こそが、アドラー心理学の根幹だと言えるその理由がわかります。
5.「いま、ここ」
アドラー心理学は、いわゆる「原因論」を否定しています。
アドラー心理学は、「目的論」を提唱しています。
「なにが悪かったのか」という原因を探すような生き方ではなく、
「これからどうするか」という目的を持った生き方こそ、人間本来の生き方だと。
それは、うすうすみんなが感じていることであり、知っていることであり、そうしたいと心の奥底にあるものだと思うのです。
ですが、人間は、原因を考えてしまいます。
なぜなら、いま、目の前にあるものだけを見れず、過去や未来の心配をしていまうからだといいます。
そこで、岸見さんはこう述べています。
「いま、ここ」に強烈なスポットライトをあてよ」
「嫌われる勇気」p270から引用
なんと強烈なことばでしょうか。
いま、ここにいる自分にスポットライトをあてる、そういう生き方が自分の人生を生きる本当の生き方だということです。
本の結びまで、さらなる強烈なことばが繰り出されます。
最後には、青年(古賀さん)が哲人(岸見さん)のお宅をあとにする場面でこの本は完結します。
『嫌われる勇気』まとめ
この書のまとめとして
- すべての悩みは人間関係からくる
- 課題の分離
- 共同体感覚
- 自己受容、他社信頼、他者貢献
- いま、ここを生きる
を重要項目だと考えます。
それぞれの意味の深さを本当に理解する。
理解するだけではなく、実行に移す。
それがアドラー心理学の真骨頂だと感じます。
いま、『嫌われる勇気』のタイトルに惹かれて手に取った自分が間違いじゃなかった。
そう思える至高の一冊です。
実際に、人間関係で悩みがちの自分が、まずできることは、『課題の分離』だと。
『課題の分離』を常に意識することで、抱えなくても良い問題を切り離すことができつつあります。
それだけで、随分気持ちが軽くなりました。
これは自分にとって、かなりの進歩です。
さらに行動を続けて、『いま、ここ』を生きてると思える生き方をしていこうと思います。
最後に。
ぜひ、この『嫌われる勇気』を手に取ってみてください。
そして、ぜひともなんどもなんども読み込んでください。
きっと、あなたの知らない、あなたの中の『あなた』と出会うことができるとおもいます。
その先にある『本当の自由』を手に入れることを心から願っています。
参考になれば幸いです。
コメント