【ブックレビュー】「幸せになる勇気」~だれでも幸せになれることがわかる~

「嫌われる勇気」の続編である本作は、

前作はアドラー心理学のいわば『地図』であり、それに対し本作「幸せになる勇気」は生きる指針『コンパス』である

と著者は述べています。

そのことばどおりだ、と最後まで読んで実感しました。

『幸せになる勇気』というタイトルとはなんと壮大なものだろうという印象でしたが、その内容からすれば、なんと謙虚なものだろうと感じるとともに、確かにこれは人が生きるための道しるべとなるまさしく『コンパス』だと確信しました。

前作「嫌われる勇気」を読まれた方はさらに深くアドラー心理学の世界に入りこむことができます

「嫌われる勇気」をまだ読まれてない方は、アドラー心理学の核心部分に触れることができると思います。

「幸せになる勇気」は実生活において、すぐに使える考え方が簡単に学べる内容になっています。

ここからは、本作の概要をご紹介していきます。

「幸せになる勇気」概要

本作は、前作「嫌われる勇気」で「勇気」を得たその後の変化から、再び哲人のもとを訪れるところから始まります。

前作同様、哲人と青年との対話形式で物語は進められていきます。

全部で5部で構成されています。

第一部は、前作の振り返るとともに、アドラー心理学が掲げる目標を再確認します。
尊敬とはなにか、共同体感覚とはなにか、本当の共感とはなにかなどに触れていきます。

第二部では、青年が再び哲人のもとに来た理由の核心を明らかにします。
青年の職場である学校を舞台に、賞罰の是非をめぐって論戦が繰り広げられます。

第三部は、学校における、教育のありかたについて、アドラーの考えが展開されます。
教育とはなにかを、アドラーははっきりと答えています。

第四部では、対人関係を掘り下げています。信頼とはなにかが明らかになります。

第五部は、アドラー心理学の核心である「愛」について語られます。
そして、真の幸せとはなにかの答えに青年は気づきます。

第一部 

本作のキーワードは「教育」です。

教育を軸にして、アドラー心理学が語られていきます。

アドラー心理学が掲げる目標とは

①自立すること
②社会と調和して暮らせること

幸せになる勇気から引用

であることを再確認します。

教育に行き詰まった青年に向け、哲人は語りかけます。

教育や指導などという、自立を目標とするときの入り口は「尊敬」であり、その「尊敬」とはなんであるか、も書かれていて、その内容に衝撃を受けました。

第二部

青年が哲人のもとにやってきた理由に沿って、物語はすすみます。

ここでは、賞罰について議論されます。

もっとも興味深いところは、教育において、ほめてもいけないし、しかってもいけない、というところ。

え。これまでの「褒めて、叱って、のアメとムチ方式」がダメなのか?と、価値観を砕かれる展開がありました。

その理由に納得しました。

第三部

教育者である青年は、アドラーを活用したにも関わらず、それに絶望するぐらいの現状について、哲人に問います。

教育とは何か、アドラーの考え方は教育者にとって、無用なものじゃないのか、と。

しかし、哲人はアドラー心理学こそが、教育にこそ必要であるというのです。

アドラー心理学の核心とも言える、「教育」に対する向き合い方について語られます。

教育とはなにか、をつかみたい方は必読の部分です。

第四部

教育者に必要なことは、生徒を信頼することを前提に生徒と向き合っていかなければならない。

信頼とは、無条件で相手を信じることだと。

相手が信じてくれるから、とかではなく、目の前のその人を担保なしで心から信じる

それが教育者の姿勢だと。

また、目の前の人を信頼できるかできないかは、その人を尊敬できるかどうかにかかっていると。

相手に信じて欲しいなら、まず、「自分から信じる」こと。

人と人とは、永遠にわかりあえることができないからこそ、まず、自分から信じていくことが大事なのだと。

いわゆるギブアンドテイク的な考えではなく、ただ一方的に信じていく。自分の持っているものを与えていくと、そのさきに、必ず自分にとって有益(人間として生きる上で)なものが得られる。

これこそが、アドラーが提唱する、人生における3つのタスクのうち、仕事、交友に続く『愛』のタスクなのです。

そして最後の第五部で、アドラー心理学でいうところの、『幸せ』が明らかにされます。

第五部

いよいよクライマックスです。

とはいっても、物語の終着ではなく、『出発』と言えます。

哲人は語ります。

とはなにか。

それは落ちるものではない、と。

愛とは、愛されることを言うのではなく、愛することだと。

あくまでも能動的な他者を愛するの技術を得ることが大事だということなのです。

その上で、愛とは二人で成し遂げる課題である、とアドラーは断言します。

学校では、一人で課題をやり遂げる方法や、大人数で課題を成し遂げる方法を学び、身につけていきますが、『二人でなにかを成し遂げる』技術は学ばない。

だからこそ、その、二人で課題を成し遂げることこそ『幸福』であるというのです。

その『幸福』とは『貢献感』。

つまり、自分が、誰かの役に立っていると感じることができたときだけ、自分の価値を実感できるということです。

実際に、その人の役に立っているかどうかは関係がありません。

とにかく、『役に立っている』という実感さえあれば、人は幸福感を抱けるのです。

そして、ついに、幸せとはなにか、の結論を哲人は、青年に告げるのです。

この最終章で、驚きと、また一方で安堵を一度に味わえます。

それは、人がまさしく求めていたものに違いないからです。

そして青年は、アドラーに絶望して、再び哲人のもとにやってきましたが、最後には、意気揚々と、哲人のもとから旅立っていきます。

これで、『嫌われる勇気』から始まった物語は幕を閉じます。

「幸せになる勇気」まとめ

前作「嫌われる勇気」を読み終えたとき、完全なる完結で、アドラー心理学のすべてを学んだと思いこんでいました。

しかし、本作「幸せになる勇気」を手に取り、読み進めていくうちに、自分の浅い考えを完全に否定することになりました。

共同体感覚とはなにか。

人生のタスクとはなにか。

そして、「幸せ」とはなにか。

その答えはシンプルです。

しかし、そのシンプルさがゆえに、われわれ人間にとっては、難しいことだと思います。

青年が尋ねます。

「運命とは自らが切り開くものというが、具体的にどうしろと?」

哲人は答えます。

踊るのです」と。

「いま」をくるくると「ダンス」するのだと。

過去をふりかえっては後悔し、

未来を案じては不安になって、なにもしないでいるのではなく、

とにかく「動け」ということなのかもしれません。

だれもが「幸せ」になっていいということを、わからせてくれた本書をぜひともお読みになり、

あなたの望む「幸せ」になるための一助となれば、これほどうれしいことはありません。

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